2015年に採択されたパリ協定は、2020年に実行フェーズに入りました。今世紀後半の気温上昇を2度未満、さらには1.5度未満に抑えようと、これから国別の削減目標(NDC:国が決定する貢献)に向けて、各国が実際のアクションを取っていかなくてはなりません。
どれくらい削減が進んでいるのか、いないのか。
GHG(温室効果ガス)排出という点で、最も大きな影響を持つビジネス活動における進捗を追っていくために不可欠なのが、企業からの環境関連情報の開示です。2000年に英国を拠点に設立された国際的な環境NGO「CDP」は、これを促進するグローバルな仕組みを提供しています。
このような情報は、企業に義務付けられている法定開示や財務情報ではカバーされていませんでしたので、企業にとっては「なぜこんな情報を出す必要があるのか」「情報を社内外で収集するだけでかなりの負担がかかる」と言ったネガティブな反応も多くあるのも当然です。しかし、地球温暖化が急速に進み、世界が協力して気候変動対策、CO2削減に取り組むことに合意した現在、この情報開示の仕組みがとても重要になっています。
CDPから回答を要請される「質問書」やスコアリング基準は、いわば、あるべき姿を映しだす項目、ベストプラクティスの骨組みと言えます。質問に「どう答えるか」悩むよりも、「なぜ問われるか」を考えることで、課題の本質を捉えることができるでしょう。
またそこで開示される情報は、投資家・産業界・政策立案者などがより良い意思決定やリスク管理、戦略強化などのために活用します。ステークホルダーとのエンゲージメントや協働の、基盤を構築することにもつながります。
現在、気候変動(Climate Change)のほか、水セキュリティー(Water Security)、フォレスト(Forest)、シティー(Cities)、サプライチェーン(Supply Chain)のカテゴリー別の質問書によって回答が要請されており、スコアリングされた結果が公表されています。 2019年の結果は、下記のレポートで読むことができます。
気候変動のカテゴリーでは、最高レベルの評価Aを獲得した日本企業は38社で、これは国別のAリスト企業数世界一となりました。
パリ協定やCOPなどではリーダーシップをなかなか発揮できない日本ですが、民間ビジネスの中では環境対応を企業経営の中心として強化している企業も少なくありません。私たちの地球の未来を左右する、企業の取り組みに注目していきたいものです。
以上
執筆:松川恵美(一般社団法人コレクティブ・アクション)
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