6月最終週は毎年、3月期決算企業の株主総会が集中します。今年は、新型コロナ禍の影響で、決算や監査の遅れ、総会開催方法の変更など、例年とはかなり様相の異なるシーズンです。6月25日は、大量の株式を売却した直後のソフトバンクや、原発関連で幹部が多額の金品を受領していた関西電力など、注目の集まる総会が開催されました。
Image by Quinn Kampschroer from Pixabay
そんな中で、ひときわ目立ったのは、「みずほフィナンシャルグループ」の定期株主総会における株主提案決議結果です。同グループには今年、株主である環境NPO「気候ネットワーク」から「気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合した投資を行うための計画を開示するよう求める」内容の株主提案*1が提出されていました。つまりは石炭事業への融資を続けていて良いのですか、といったことなどを問うている訳ですが、気候変動に関するこのような株主提案は、日本では初めてのことだと言われています。
総会の議案は、会社側から提出されるものと、株主が株主提案権を行使して提案するものがあります。これまでは会社側への賛成率が高く、株主提案には反対、というケースがほとんどでした。
結果は反対多数で否決されましたが、賛成率は34%を越えたと報道されています。特に世界の機関投資家の多くが利用している議決権行使助言会社の大手2社が、揃って「賛成」を推奨しており、否決とは言え、経営として無視できないほどの支持を集めたと言えるでしょう。また グレタ・トゥーンベリさん達学生の活動団体 Friday For Future の大学生も株主として参加し、質問の機会を得た一人が、会社の方針とパリ協定との整合性に関して質問しました*2。こうした若い世代からの声を、現経営陣がどのように受け止めたのか、今後の動きも注目されます。
写真左:Friday For Future Japan 、右:COP21 パリ協定採択
(出所:左 Greenpeace Japan、右 国連広報センター)
日本初、気候変動関連、株主議案が1/3 の指示を得る、ということは、それだけで大きな意味があります。これまで世界でも気候変動関連の株主提案が、ロイヤル・ダッチ・シェルやBPなどの石油会社や、J.P. モルガンやコモンウェルス銀行などの金融機関で、可決するまでに至っていますが、いよいよ日本でも動き始めたのです。
さてこの事実を、報道はどう伝えているか・・・
今回、メディアによる切り口の違いが、おもしろいほどに鮮明です。”3割強の支持を得た”という成果を伝える新聞、”気候関連NPOの株主提案を否決”という見出しの新聞。どちらも事実ですが、伝わる印象がまったく違います。
意図的であるかはわかりませんが、受け取る側がしっかり知識と関心を持って記事を読むことが、こんなにも大切である、ということを示す例です。
私はもちろん、こんなにも支持を得た、と理解しています。
以 上
執筆:松川恵美(一般社団法人コレクティブ・アクション)
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参考資料:
*1 【プレスリリース/特定非営利活動法人 気候ネットワーク】みずほフィナンシャルグループの株主として 日本初の気候変動に関する株主提案を提出(2020年3月16日)
*2 【プレスリリース/国際環境NGO 350.org Japan】
みずほFG株主総会、気候変動に関する議決で3分の1の株主の支持(2020年6月25日)
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