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マスクが不足!スギ花粉症大丈夫?〜国産木材の需要を考える

更新日:2020年3月26日


令和2年2月、新型コロナウイルスの脅威が世界を駆け巡り、マスクが入手困難、こんな時期にスギ花粉症のピーク到来・・・花粉症の皆様のご苦労を思うと、発症していないわたしは申し訳なく思うほどです。今や都民の約半数がスギ花粉症に毎年悩まされています(表1)。年々有効な治療法や予防薬も開発され、東京都でも原因の研究や対策を継続していますが、抜本的な解決こそが必要だと感じている方も多いでしょう。東京って、どうしてこんなにスギ花粉が多いの??


(表1)出所:東京都健康安全研究センター 「花粉症一口メモ 2020年版」


歴史を遡ると、江戸時代の木材産業は、大都市・江戸の橋や住宅、商店などの木造建築を支え、明治以降は近代国家への大規模な開発や燃料として、また大戦後の東京復興などにも大きな役割を果たしていました。幕府や藩、明治政府は、森林資源の過剰消費によって山林が荒廃することへの危機感を持ち、それが原因で起きる河川氾濫などの災害や海洋資源への影響も当時から認識されていました。そのため森林資源の保護や植林促進事業も繰り返し行われていました*1。昭和に入り戦中、戦後の復興では、さらに大規模な需要急増により供給能力を超えて伐採されたため、その対策として広葉樹林から、スギやヒノキといった成長の早い針葉樹の人工林に置き換える政策が推進されました。しかし時は移り、機能性の高い素材への転換により木材需要が減少、さらに海外からの安価な輸入木材に押され、国産材は徐々に利用されなくなりました。

そう、つまり日本の森林の課題は、グローバルな課題である「森林減少(Deforestation)」とは異なります。大量に植林された末、伐採適齢期に達したにも関わらず行き場の無くなった針葉樹が放置され、その結果人工林が荒廃していくという点が大きいのです。これは、もっとも花粉をつける樹齢のスギが多い事とも重なります(表2)。

(表2)出所:東京都健康安全研究センター 「花粉症一口メモ 2020年版」


もっと国産のスギなどの木材を使おう、という多くの官民・森林・木材関係者の努力や活動によって、近年、需要側である都市部や地域の公共建築などにおける木質化は増加しているように見えます。温かみを感じる木の良さが改めて見直されている時代になったとも言えるでしょう。

わたしの住む品川では、平成29年11月から令和元年7月にかけて、東急池上線戸越銀座駅や旗の台駅で、「木になるリニューアル」が実行されました(写真)。「東京都森林・林業再生基盤づくり交付金事業」の補助を受け、多摩産材を活用し、都内の鉄道施設として初めてCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)工法が使われています。

完成した旗の台駅は明るく、清々しささえ感じられ、過酷な通勤旅客にとって少しでもゆとりとなっているといいな、と思います。


建築物に木材を使う、というのは考えてみれば日本の得意とする分野だったはず。完成した戸越銀座駅を眺めると、和風の情緒が漂い、近年増加している同商店街への外国人訪問客にとっても、魅力となっているのだろうと想像できます。プラスの効果がたくさん見出せるのではないでしょうか。もちろん、「健康な森林の持続的経営」は気候変動対策、地球温暖化への対応として最重要課題の一つでもあります。このような試みが広がっていくことが、緩和策の一つとなるかもしれません。


左上から東急池上線旗の台駅ホーム屋根部分、戸越銀座駅ベンディングマシン、多摩産材使用、駅名看板(筆者撮影)


以上

執筆:松川恵美(一般社団法人コレクティブ・アクション)


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参考資料

*1 平成25年度森林・林業白書、林政年表





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